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伝説について
伝説は「歴史の事実」を解説する一つの方法であるが、そこで語られているのは「伝承的事実」であって、「歴史的事実」ではない。ともすると私たちは「歴史的事実」のみを「歴史」と考えがちであるが、決してそうではなく荒唐無稽とも思える「伝承的事実」には、その土地の人々の歴史や歴史に対する見方が表われている。つまり歴史観の表現といえよう。伝説はその土地にしかないものと思われているが、類似する内容のものが極めて多い。例えば弘法大師や八幡太郎義家は福島県内くまなく歩き回ったといってもよい。こうした歴史的事実はありえないわけで、これは何者かが言い伝えを持ち運んだからなのである。古い時代から私たちの先祖が、盛んな地域間交流をしてきたあかしでもあろう。
歴史は土地毎に作られるものであり、こうした伝説もそうした地域の歴史を作るもとになっているといってよい。土地毎の歴史は、国の歴史と異なりその地に住む人々独自の歴史でありの「土地の誇り」の核になっているのではないだろうか。
伝説にはまず事物があり、社会の変化に応じて、その事物を合理的に説明できる内容に作り変えられていく性質を持っている。したがって「正しい伝説」とか「伝説の本家」は存在しないのである。
選択の基準
1、 ここに取り上げた伝説は各種文献から採択したが、福島県内の全域をほぼ網羅し採話数の多い岩崎敏夫編著『磐城岩代の伝説』(第一法規、1976)を基本文献にした。
2、 『磐城岩代の伝説』(第一法規、1976)に収録されていない町村に関しては、自治体史などを使ったが、手元にないものもあり古い郡誌なども参照している。
3、 可能な限り引用した原典に当たるように心がけたが、原典に当たることができないものもある。
4、 採択した伝説については出典名を掲げた。
5、 一伝説200字にまとめたので、原文そのままを引用できなかった。そのため文章表現を変えたり、筋を省略したりしたものもある。しかし基本的な要素は変更せず、可能な限り原典に忠実に構成した。したがって資料として使う場合には、原典に当たるなり現地で直接採話するなりされたい。
6、 伝説は市町村内に数限りなく存在するが、ここではその中から次の基準で選んだ。
1) その市町村内に現に存在する具体的な事物と結びついている伝説を選んだ。つまり写真に撮ることができる対象を選んだ。
2) その市町村のいわゆる名所旧跡と結びついた伝説を選ぶようにした。例えば温泉や寺社の縁起などは取り上げるように努めた。
古い文献から引用したものは、その伝説が現在伝承されているかどうか不明である。また事物も現存しているかも不明である。
伝説報告の数が少ない市町村にあっては、選択の余地がないものもある。

執筆・監修
みちのく民俗文化研究所
代表 岩崎真幸